「益久綿」のこと



  ●益久綿ができるまで
  ●益久綿を作る中国の工房取材記その1 その2


 益久綿を大事に作っている主力の工房は中国山東省にあります。この工房では近隣の農家に綿花の栽培と糸紡ぎを依頼し、工房内の施設で染色、織り、捺染、縫製までを一貫して行い、糸や布、そして布製品を全て工房内で仕上げています。
 益久染織研究所にて勤務の後京都で染め工房を開いている青木正明氏に、今回益久染織研究所の中国工房を取材依頼しました。ここでは氏の目を通して益久綿作りの現場を紹介させて頂きます。




 益久綿を作る中国の工房取材記  〜手染メ屋アオキ

2006年8月、益久染織研究所の吉井さんに同行していただきボクは夏の暑くて熱い中国に訪れました。

ボクにとってはじめての中国が今回の益久染織研究所の中国工房取材となったのですが、中国初体験はボクの生ぬるい日本での生活に喝を入れてくれるに十分な刺激となりました。

工房での皆さんの仕事ぶりに対する驚きと賞賛はもちろんですが、仕事の場面とは関係のない町や村や市場や農場で感じ取られるヒトのパワーというものにも素晴らしくヤラれてしまいました。

左の写真は益久の工房とは全く関係ありません。工房の近くで開かれている農村の市場でおもちゃを売っていたおじいちゃんです。
道行くヒトたちに邪魔になることをおくびにも気にせず(笑)、自分の何倍もあるリアカーにボロボロのおもちゃを乗せ、力強く大きな声で宣伝しながら売り歩くおじいちゃん。
ボクはこのおじいちゃんに中国のパワーの原点を垣間見た気がしました。

冒頭にこのおじいちゃんの画像を載せたのは、彼のパワーが益久の工房も含めた中国の力強さを代弁してくれているからです。素晴らしい力です。

それでは、益久染織研究所の中国工房のご紹介にしばしお付き合いを・・・。




〜取材記その1〜



 @綿花の栽培 〜広大な有機農場

益久染織研究所の中国工房のある中国山東省の内陸部は、昔から綿産業が盛んな土地でした。日照時間が長く海から遠く適度に乾燥していて朝晩の寒暖差が激しい内陸気候。益久綿がこの地で栽培されることになったのも自然の成り行きだったんだ、と現地を訪れて思いました。とにかく広いっ!広いです。何せ甲子園軽く200個分くらいがずっと綿花畑です。その隣にはやっぱり甲子園100個単位のとうもろこし畑や大豆畑。いやはや、なにせ規模が違います(笑)。

そして、その広大な土地の綿花を手作業で有機栽培してる・・。これはものすごいことです。
当たり前ですがほんの4〜50年前まではどの国も農業はすべて有機栽培でした。そして、科学の発達と共に効率的な農法が研究されて様々な薬品が開発されたのですが、この山東省の農家はそんなものとは今の時代になっても無縁です。「いや、もう、僕らがやってるこの方法でずっと昔から栽培してるから、別に変える必要ないですし」と、ケレン味無くごく当たり前に農家の方たちは話してくれました。

すんごい、これって。

そして、彼らはその素晴らしさや賞賛にはあまり関心が無い模様。それより目の前の畑の管理に大忙しです。素晴らしいパワーです。その生業を見て涙出そうになりました。

では、この美しい綿花栽培の一端を画像と共にどうぞ。

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見てください!もう、視界一面が綿花畑です。ほんともう360度何処向いてもこの風景ですヨ。ここは工房から車で30分位の契約農家さんの畑。車で降りてから更に30分歩いてやっと綿花畑に着きました。汗だくでした(笑)。これを全て人力で管理してます。すごいです・・。
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綿花です。丁度花が咲いていました。これは茶綿の株。綿花の花は最初白で、その後黄色、赤系へと色が変り枯れていきます。所々に花が枯れてコットンボールになる前の物が見えますよね。わかります?
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これは緑綿の株。わたが元々緑をしている綿花です。左の株と比べて葉の色が全然違いますよね。この緑綿はとてもデリケートで弱く、育てるのが大変とか。左の綿花に比べて株が密集してないですよね。これは先日の嵐で大方死んでしまったらしいです。この株はその生き残り。がんばれっ!
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大きく健康なコットンボールができるには無駄な枝や芽を落とさなければいけません。養分が無駄に使われないように。画像のように小さな枝を手でつまんで取り去ります。これ、一株ずつヒトの手でやるんです!あの広い農場全てですヨ!
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丁度枝取りをしているおじさんがいました。もう一人奥さんがいたんですがカメラを向けると恥かしがって畑の中にしゃがんでしまいました^^;。聞くと二人で朝から晩までずっとやってるらしい。ご苦労様ですm(__)m。
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この広い農場を管理されている胡さん達。もちろんこの綿花畑、2人だけでやってるんじゃないですよ。作物によって閑繁期が違うので時期によって村の人たち総出で農作業を助け合うそうです。すばらしいですね。見習わなきゃ。





 A手紡ぎ 〜気の遠くなるような熟練手作業

益久の中国工房が農家の人たちにお願いしているもう一つの作業、それが糸紡ぎです。そしてその紡ぎ方は全て手紡ぎ。手紡ぎ手紡ぎとコトバでは簡単に言いますけど、これ、ほんっっとに大変ですよね。あきれるくらいに時間がかかります。そりゃ趣味の織物とかだったらなんとか個人でできるでしょうけど、月に何トンもの手紡ぎ糸を作るにはこれはもう人海戦術しかありません。何せベテランが一日8時間紡いで200gの糸しか出来ないんですから・・・。

何百人もの農家の人たちにお願いをして、収穫した綿(ワタ)から糸を紡いでもらうのですが、熟練作業にはやはり能力の差というものが出てきまして、超熟練者はその中でも一部の方達です。そういった熟練者が極細の手紡ぎ糸を紡いでくれることによって、最近完成した本当に薄くてシャリ感のある益久綿の布ができるようになったんですね。

ベテランの方たちの手紡ぎ作業を御覧下さい。


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糸紡ぎをお願いしている農家の一室です。おばあちゃんと奥さんが手紡ぎをしてくれています。左では娘さんが刺繍の作業をされていました。こうやって、農場作業の合間に勤勉に手作業をされてるんですね。
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このおばあちゃんが益久綿の手紡ぎ超熟練者の一人!静止画ではわかりにくいですが、ちょっと手紡ぎしたことあるヒトならこの方の手紡ぎ風景がどれだけすごいかわかるはず。あぁ、動画があれば・・。とにかくね、早くて正確に細い糸がどんどん紡がれて行くんですっ!
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錘(つむ)の部分の画像。錘を斜めにするのは基本ですが他にも一つスゴイ工夫が。錘の先に縦方向に糸が一本走ってますよね。おばあちゃんに聞くとニヤリとして「これがヒミツの工夫よ」と教えてくれました。この工夫のおかげで安定して良い糸が紡げるらしい。ヒミツなのにいいのかな。ま、その前にちゃんと糸車回せるまで何年もかかるんでしょうけど(笑)。
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おばあちゃんのマイマシーンです。家族のヒトに作ってもらって調子の悪いところは直しながらずっと使ってるんですって。見てるとギシギシいうし、正直言って壊れそうなんですけど、要所要所はちゃんと働いてくれるんでしょう。みてるともうおばあちゃんのカラダの一部みたいでした。
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隣で糸車を回してらしたのはおばあちゃんの息子嫁さん。彼女も十分熟練者なのですが、おばあちゃんの隣だとちょっとかわいそう。姑にあたるおばあちゃんをこよなく尊敬しておられました。超熟練おばあちゃん予備軍ですね!
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おばあちゃんご自慢のお手製刺繍子供くつと一緒にパチリ! 時間を見つけてはお孫さんのお出かけ用に作るそうです。おばあちゃん何と70歳オーバーですって。きれいで若いなぁ。写真を撮られる前に裏からキレイな白シャツを羽織ってこられた、とってもオシャマさんなおばあちゃんでした【^^】。

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